高圧受電設備の地絡検出用の計器用変圧器(ZPC)の試験電圧がE(=3,810V)であることを、アホのように対称座標法を適用して証明する

GR(地絡継電器)の零相電圧入力に用いているZPC(計器用変圧器)の試験は、高圧端子を三相短絡して3,810Vを印加して行う。

f:id:Ryo9508:20200505123523j:plain

なぜ3,810Vで良いのか謎だったのだが、意を決してアホのように対称座標法を適用して計算してみた。

ZPCの出力電圧は、一線地絡故障の際に100%となるように作られている。

 

【まずはZPCの対称座標法表現】

 (零相回路)

ZPCに零相電流Ioを流すと下図(左)のようになり、
Vao=Vbo=Vco=(1/(jωC1)+3/(jωC2))Io:Io=jω(C1C2)/(3C1+C2) ×Voとなって、等価回路は下図(右)のようになる。

f:id:Ryo9508:20200505145611j:plain

(正相、逆相回路)

ZPCに三相平衡なI1またはI2を流すと、中性点で電流は零となりC2には流れない。よって、
V1=1/(jωC1)I1:I1=jωC1V1、V2=1/(jωC1)I2:I2=jωC1V2

f:id:Ryo9508:20200505151516j:plain

 

【一線地絡事故の等価回路】

電源(発電機)の零相・正相・逆相等価回路は 以前にやった。
ryo-blackcomb.hatenablog.com

一線地絡故障の条件式は、
Ib=Ic=0により、Iao=Ia1=Ia2=(1/3)Ia
従って、対称座標法表現は、下図のように零相回路・正相回路・逆相回路の故障点引き出し端子を直列につないだ回路となる。
(2020.5.16:下図と最後の図に誤りがあったため差し替え)

f:id:Ryo9508:20200516090728j:plain



 ここで、電源は理想電源として内部インピーダンスZgo=Zg1=Zg2=0、電力会社の高圧供給は非接地系統であるためZgN=∞とする。

Io=jωC1C2/(3C1+C2) ×Ea、Vo=-Ea、V1=Ea、V2=0となる。

 

【ZPCのC2端子電圧】

上記一線地絡の状態のとき、ZPCのC2にはIa=Ia0+Ia1+Ia2=3I0が流れ、C2端子電圧は
①=3Io/(jωC2)=3/(jωC2)×jωC1C2/(3C1+C2) ×Ea=3C1/(3C1+C2) ×Eaとなる。(下図左)

一方、ZPC単体試験にて三相一括で試験電圧Vtestを加えると、C2端子電圧は分圧比計算により
②=(jωC2)^-1/((jω3C1)^-1+(jωC2)^-1)=3C1/(3C1+C2)×Vtestとなる。(下図右)

f:id:Ryo9508:20200516090741j:plain



①と②のC2端子電圧が同じとなるから、Vtest=Ea(=3,810V) となる。

(証明終り)

ーーーーーーーーーー

「アホのように計算してみる」と書いたのは、なんとなくベクトル作図で簡単に説明できそうだからであるが、それはよう分からん。