クイズdeメンテ2011年09月~電力系統の地絡電流~難問だった

 この問題の答えを定性的には理解できなかったので、対称座標法を勉強しなおして導いてみた。

ちなみに正解は(3)。

「電力系統技術計算の基礎」/電気書院 等により、

(零相回路)
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  発電機    変圧器(一次:Y、二次:Δ)   送電線

※変圧器のXT12は、一次・二次漏れリアクタンスの一次換算値で、
 XT12=XT1+XT2/n^2

※送電線の対称座標法表現の回路を記述している文献はほとんどなく、1kmの(零相電圧の送受電端電位差)/(零相電流)を1km当たりの零相インピーダンスz0[Ω/km]として文章と式で説明しているものが大多数であるが、回路図は上図のようになることが自明と考えられる。

 

(正相回路)

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  発電機    変圧器(一次:Y、二次:Δ)   送電線

(逆相回路)

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  発電機    変圧器(一次:Y、二次:Δ)   送電線

※変圧器と送電線の逆相回路は、正相回路と同じ

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「電力系統技術計算の応用」/電気書院 等により、
一線地絡故障の条件式は、
Ib=Ic=0により、Ia0=Ia1=Ia2=(1/3)Ia
従って、対称座標法表現は、下図のように零相回路・正相回路・逆相回路の故障点引き出し端子を直列につないだ回路となる。
(但し、変圧器・送電線の故障点左側部分を「A」、右側部分を「B」添字で表記)

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上図により、
Ia0=Ia1=Ia2=Ea/{ (jXTA12+3ZTAn+jXA0)//(jXTB12+3ZTBn+jXB0) +
         (ZG1+jXTA12+jXA1) + (ZG2+jXTA12+jXA2) }
=Ea/{ (jXTB12+3ZTBn+jXB0) + (ZG1+jXTA12+jXA1) + (ZG2+jXTA12+jXA2) }
(左側のY結線変圧器は非接地なので、ZTAn=∞)

故障電流If=Ia=Ia0+Ia1+Ia2=3Ia0

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上図を流れる電流をよく見ると、

(1)故障点の左側から流れる電流は零相電流のI0のみである。よって、送電線の健全相は右から左へI0が流れる。
(2)故障相の地絡電流は3I0であるから、故障相は右からから故障点へI0、右から故障点へ2I0が流れる。
(3)故障電流3I0の行き先は、直接接地している右側変圧器中性点である。また、変圧器Δ結線は非接地なのでI0が循環している。

(1)~(3)を頼りに電流分布を書くと、下図のとおりである。

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従って、断線しても影響が最も少ないのはA点である。

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